看護師としてやりがいを感じる場面は多いはずだが、勤続年数を重ねるうちに次第に意識しなくなってしまうものである。
慢性的人手不足に悩まされる医療現場で雑務に追われ、医師や同僚看護師との人間関係に疲れ果て、初心を忘れてしまうことが多い。
看護師になろうと思った頃は、雑用に専念するとか、職場の人間関係を上手くこなすことなどは、二の次の問題であり、もっと大切な理念があったはずである。
そもそも、医療現場では患者が主体であり、看護業務は患者の回復を支える補助行為にすぎない。
患者がいなければ、医療業界は成立しない。
患者が抱える傷病がこの世から消えれば、医師も看護師も仕事を失うのである。
この点を忘れて、医療現場の主体が医師や看護師であるかのような錯覚に陥ると、些末なストレスが気になってくる。
患者の健康回復という目的に集中すれば、様々な雑念から解放され、力点を置くべき優先順位が明らかになるだろう。
つまり、この目的が達成されれば、職場における自分の立場やプライドなど他の些細な事項はどうでも良いと考えることが最も重要なのだ。
もっとも、看護師が関わる全ての患者が回復できる訳ではない。
不治の病やもはや手遅れとなった傷病については、患者に対して回復優先以外のアプローチが必要になるだろう。
この場合も、患者が主体であることに変わりはない。
看護師も人間であるから、どうしても自分の快と不快の感情に囚われがちだが、常に原点に戻る習慣を持てれば、看護師のやりがいを見失うことはないだろう。